花の名は、ダリア
困った顔で俯いてしまったクララを、ソージは表情もなく見下ろした。
いつも、こう。
ぶっきらぼうに断って。
また明日、と手を振って。
ナニカ言いたげなクララを残して、ソージは去る。
だが…
「頑なに家に誘うよな、おまえ。
他はねェの?」
今夜ソージは、ステッキで自らの肩をトントンと叩きながら、いつも通りじゃない言葉を口にした。
ここからのシナリオは、ない。
「他? 他って?」
なんのことだかわからない、といった様子で、クララは首を傾げる。
一歩踏み込んでみたが、結果は変わらず、か。
「ねェなら、もうイイ。
また明日な。」
やはりぶっきらぼうに挨拶したソージが踵を返そうとすると…
「ちょ… 待って下さい!」
クララにコートの袖を掴まれた。
「ナニ?」
「あの…お礼をさせて下さい…
お願い…」
振り返ると、クララは思い詰めた表情でソージを見上げていた。