花の名は、ダリア
じゃあね。
また明日ね。
やっぱり今夜もいつも通り、ソージはダリアの待つ宿へと急ぐ。
いつも通りの時間に帰って。
いつも通りシャワーを浴びて。
いつも通りダリアを頭のてっぺんから爪先まで堪能して。
いつも通りイキ果てたダリアを腕の中に閉じ込めて、束の間の眠りに落ちて。
だけど…
だけど…
(なんだ?)
いつも通りではない違和感が、ソージの足にブレーキをかけた。
見上げれば、いつもは霧に隠れっぱなしの月が、今夜は薄汚れたこの街を照らしている。
なんだ?
この、引っ掛かるカンジ。
なんなんだ?
『私たちは似てる』とか。
『もう二度と誘いません』とか。
全く…
いったいなんだっつーンだよ、クソが。
あーゆー含みのある物言いされちゃ、気になっちゃうじゃねーかよ。
(…
まさか、ね。)
溜め息を吐いたソージが、止めていた足を再び踏み出した頃…
コンコンっ
クララの住むテラスハウスの古くて重そうな玄関ドアを、誰かが叩いていた。