花の名は、ダリア
「こんばんは、アランさん。
なにかご用?」
「あのー…
あのー…
お話がありまして…」
「もう夜更けだし、明日じゃダメですか?」
「あのー…
あのー…
皆がいる前じゃ、話しづらいと言うか…」
なんだかモジモジクネクネしながらも、アランは時折家の中を覗くような仕草をする。
あからさまに『どうぞー』と言って欲しそう。
追い返すべきか、招き入れるべきか。
クララはまたも迷っていた。
この様子なら、断ることは簡単そうだ。
でも‥‥‥
「…
アランさんは、お一人でココまでいらしたの?
それとも誰かと一緒に?」
ドアの外に視線を走らせながら、用心深くクララは訊ねた。
「あのー‥‥
あのー…
僕、一人で…」
アランのその言葉は、嘘ではないようだ。
街は静まり返っていて、人の気配はない。
落ち着かない様子で俯くアランをチラリと一瞥してから、クララはドアを大きく開けた。
彼の望むままに。