花の名は、ダリア
「あのー…
あのー… 片付いてますね…
そのー… 思ってたよりも…」
一階にあるリビングのソファーに腰を下ろしたアランは、部屋のアチコチを眺め回しながら言った。
って…
気弱そうに見えて、失礼千万だな、コイツ。
掃除なんてしそうにないほど、ガサツに見えるか?
『片付けられない女』に見えるってか?コノヤロー。
「そりゃお仕事は忙しいケド、家事もそこそここなしてますよ。」
アランに背を向けたクララは、ストーブで湯を沸かしながらこっそり苦笑した。
「それで、お話というのは」
「あのー… もっと、生活感のない部屋を想像してました…
そのー… シーツの乱れたベッドしか置いてないような…」
さりげなく話題を変えようとしたのに…
クララの声を遮ってまで、アランの部屋批評は続く。
ますます失礼だな、おい。
そろそろ怒ってもイイ?
紅茶なんて用意しなくてイイ?
なんだったら、このお湯ぶっかけても許されるよネ?
そんな、ジワジワとこみ上げる怒りに悶々としていたクララは、一向に気づけなかった。
静かにソファーから立ち上がったアランが、背後に迫っていることを。