花の名は、ダリア
肩に手を置かれ…
いや、力一杯握りしめられ、痛みに顔を歪めたクララが振り返る。
「おまえのような女には、そんな部屋で充分だろう?」
は?ドチラ様?
姿形はアランだ。
でも、ドチラ様?
『あのー…』はどーした?
モジモジくんはドコ行った?
さっきまでのアランではない、見たことのないアランを前に、クララは愕然とした。
動けなくなった…それどころか声も出せなくなったクララの肩を、アランが強く押す。
身体が傾いた拍子に触れてしまった銅製のケトルが、ストーブから落ちる。
硬直している場合ではない。
床を転がって降り注ぐ熱い飛沫を避けたクララは、素早く上半身を起こしてアランを睨んだ。
「ナニをするんです!?」
強い非難を露にした、激しいその眼差し。
けれど、モジモジ全身タイツを脱ぎ捨てたアランは怯まない。
「美しい…
やっぱり売女には、床に伏した姿がよく似合う…」
クララを見下ろし、恍惚とした表情でそう呟いて、ジャケットの内ポケットからナニカを取り出した。
手首にスナップを利かせてソレを振ると、錆がついた刃が飛び出して…