花の名は、ダリア

大人しく床に横たわるクララのドレスを、アランが剥ぎ取っていく。


「恐怖で声も出ないか?
どうやらわかったようだな。
俺が『イーストエンドの切り裂き魔』だと。」


なんという衝撃のカミングアウト。

世間を騒がせているイカレた連続殺人犯は、アランだったのか?

なのに…


「そう言って脅せば、女が抵抗しないとでも思った?」


組み敷かれたクララは、もう動揺の片鱗も見せずに口を開いた。


「それとも…
滅多刺し、なんて雑な殺し方をする模倣犯が最近現れたそうだケド。
アレがアランさんかしら?」


「は?」


「『イーストエンドの切り裂き魔』の目的は、粛清なんかじゃないわよ。」


「‥‥‥は?」


クララの胸元から視線を上げたアランが、淡々と語る彼女の顔を凝視する。

その表情に怒りはない。
焦りもない。
もちろん恐怖も更々ない。

ただ口元に、普段のクララが決して見せない、嘲りの色が僅かに浮かんでいた。


「彼女の目的は、復讐。

なぁんて言えたら、ドラマチックなんだケドね。」

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