花の名は、ダリア

だが…


「抜かないほうがイイわ。
血が噴き出すから。」


クララの、いつもと少しも変わらない穏やかな声が、アランの動きを封じた。

なら、どーすりゃイイの?コレ。

目を潤ませはじめたアランの前で、立ち上がったクララがドレスの裾をたくしあげる。

露になった、艶かしい腿。
露になった、ガーターベルトに挟まれたウェブリー・リボルバー。

って、ナニソレ?まじか。
軍用拳銃じゃねーかよ。

ソレと比べりゃ、フォールディングナイフが子供の玩具に見える。


「まだ殺せないンだから、大人しくしていてね。
運ぶのが大変だから、上の階まで自分で上ってもらわなきゃならないの。」


完全に立場が逆転した。

微笑みながら。
だが、リボルバーを掲げながら。

クララはアランの命を握った。


「そろそろ限界だったのに、ソージさんにフラレてしまって困ってたのよ。
よかったわ。
今夜、アランさんが一人で訪ねてきてくれて。」


いったい上の階にナニがあるンだ?
いったいナニが限界だったンだ?

わからない。
わからない。

わかるのは、コレだけ。

彼女は狂ってる。

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