花の名は、ダリア
白目を剥いてパタリと倒れた自業自得バカを冷めた眼差しで一瞥してから、ソージはクララに視線を向ける。
「ソージさん…
ドコから… どうして…」
引き裂かれたドレスの襟をかき集めて胸元を隠しながら、彼女は茫然と呟いた。
だって、玄関の鍵はアランが閉めた。
こっそり横目で確認もした。
ソレよりナニより、ソージは誘いには乗らず、唯一の花の元へ帰ったはずだ。
なのになぜココに?
どうやってココに?
「窓から入った。
ヴァンパイアらしいだろ?」
(んなワケあるか。)
ドヤ顔で部屋の奥にある窓を指差したソージを見て、クララは眉を顰めた。
ハイハイ、ヴァンパイアね。
だから、気配を消して、女の家に窓から侵入すンのも、簡単ってワケだね。
じゃ、ココにいるのは、気が変わって誘いに乗って、血を吸っちゃえって魂胆なワケ…
「別に、おまえを襲いにきたンじゃねェよ。」
クララの脳内を読んだかのように軽く片手を振り、ソージは唇を歪めて笑った。
そしてその笑みを崩さずに、クララに衝撃をもたらす一言を…
「俺は、おまえの愛するバケモノを殺りにきただけだから。」