花の名は、ダリア
「え…」
色を失くしたクララの唇から、掠れた声が漏れた。
けれど容赦はしない。
遠慮もしない。
ソージはクララを気にもとめない。
「『イーストエンドの切り裂き魔』は無関係じゃない、か。
刑事の勘ってヤツはバカにできねェな。
刑事じゃねェのにな。」
「イヤ…」
「ドッカに飼ってンだろとは思ってたが、まさか同棲してたとはね。
そりゃ予想外だったわ。」
「ヤメテ…」
「いるンだろ?ココに。
…『穢れし者』が。」
「イヤァァァァァ!
フランシスを殺さないでェェェェェ!!」
ソージの黒い瞳が物騒な光を宿した瞬間、クララの口から絹を裂くような絶叫が放たれる。
そして、別のモノも放たれる。
ガァン…
ガァン…
ガァン‥‥‥
銃弾だ。
クララは胸の前で構えたウェブリー・リボルバーを、ソージに向けて三発発砲した。
反動でよろめいた彼女が、視線を戻した時にはもう…
ソージはソコにはいなかった。
床に倒れてもいなかった。
焦燥感に駆られての凶行だったとは言え、外すような距離ではないにも関わらず、だ。