花の名は、ダリア
…
…
…
あーあ。
言っちゃった。
ヤっちゃった。
「イイの?
やったー。」
なんて、彼女はまた笑う。
嬉しそうに。
子供のように。
ごめんね?
そんな無邪気な笑顔を向けてもらえる資格はないンだよ。
俺はズルい男だ。
もう会っちゃいけないのに、また会える可能性を残しておきたかったダケ。
彼女の身の安全を蔑ろにして、自分の欲望を押し通したダケ。
俺はヒドい男だ。
本当にごめんね?
昼間のバーサンと同じように、嘘に塗れたソージを残して女は去っていく。
昼間の黒猫と同じように、身軽に塀に飛び乗って、そして駆けて。
ヒョイヒョイと塀から塀へ、その上、屋根にまで飛び移って。
あぁ…
行ってしまう…
やっぱりソージは、最後まで女から目を離すことができなかった。
その姿が小さくなって闇に溶ける寸前、彼女がチラリと振り返ったような気がした。