花の名は、ダリア
幾人もの血臭と腐臭が混ざり合った殺人現場に、全く似つかわしくない静かな声が流れる。
「これは罰なんだろうか?
クララを裏切った罪への。
そして、その罰として与えられた病から逃げ、生きたいなどと願った罪への…」
なんて切ない響きだろう。
なんて物悲しい響きだろう。
胸が締めつけられるほど。
ダリアは吊り上げていた眉を下ろし、ついでに窓枠からも飛び降りた。
そして安楽椅子に歩み寄って…
「難しいコトはわかんない。
でも、願うことは罪なんかじゃないわよ。」
身を屈めてフランシスの顔を覗き込み、軽く首を傾げた。
「『誰か』の、『誰かのための願い』で、救われる『誰か』もいるのよ。
たとえそれが、夢物語だって笑っちゃうような願いだったとしても、ね。」
頬にエクボを作ったダリアが、うふふ、と含み笑いを漏らす。
ナニソレ?思い出し笑い?
楽しそう…ってか、嬉しそうだネ。
その、透明感のある無邪気な笑顔に、嘘はないと言うのなら。
「じゃあ…
僕はどうして…」
こうなってしまったのだろう?
フランシスは白濁した瞳で、縋るようにダリアを見つめた。