花の名は、ダリア
「ありがとう…」
フランシスが吐息のように囁く。
彼もまた、微笑んでいた。
…
って、ダメダメ。
コレで満足しちゃ。
「あなたが悪魔だと言うのなら、最後に一つ教えてくれないか?」
笑みを消して切実な表情に戻ったフランシスは、身を乗り出してダリアに訊ねた。
「あの悪魔が言った、『クララへの愛が本物ならば耐えられる』というのは、本当なのか?
僕がこんな風になったのは、僕の愛が真実ではなかったからなのか…?」
「それは違うわ。」
ダリアは何度も首を左右に振った。
乱れた髪が、キラキラと淡い金の光を散らす。
「アナタにかけられたのは、人間性を一片も残さず奪う呪いなの。
なのにアナタは人間の心を失っていない。
どうしてだと思う?
心までバケモノになってしまえば、苦しまずにすむのにね。
ねぇ、どうしてだと思う?」
「…」
「クララちゃんを殺したくないから、じゃない?
クララちゃんを愛しているから、アナタは人間でいられたンじゃないの?」