花の名は、ダリア

なんて身勝手で醜いんだろう。

大勢の誰かの命を奪って生きたクセに、愛する人だけは犠牲にしたくないなんて。

その一心で、人間でいられたなんて。

なんて身勝手で醜い愛だろう。

そう。

責められようが、罵られようが、僕は真実、彼女だけを愛してた。

フランシスは安楽椅子の背もたれに身を預け、そっと瞼を閉じた。


「クララに伝えてほしい。
彼女が今まで犯した罪は、全部僕の罪だ。
彼女に責任はない。
全てを忘れて幸せになってくれ、と。」


「ちゃんと伝えるわ。
…おやすみなさい。」


『おやすみなさい』は別れの言葉。

時が来た。

あーあ…
最期まで身勝手だったな。

左胸に、抉られたような鋭い痛みが走る。
事実ナニカが抉り取られ、体温を感じない血が噴き出したのがわかる。

こんな汚れ役、突然やって来た神のような自称悪魔に押し付けちゃって。

アフターフォローまで丸投げしちゃって。

その上…


(僕を忘れてくれ、とは言えなかった…)


だって、愛していたんだ。
愛しているんだ。

どうか、どうか…

赦してね‥‥‥

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