花の名は、ダリア
「で?
ナニをやってたンです?」
「ナニって…
わかるでしょう?」
薄く微笑みながらソージから目を逸らしたダリアは、安楽椅子に視線を落とした。
そこに座る人はもういない。
ただ、塵が積もっているだけ。
「彼は眠りについたわ。
彼が願った通りに。」
「『彼』って」
「『彼』ってフランシスなの!?」
『彼』って『穢れし者』?
ソージはそう訊ねたかった。
けれど、ソージを追って階段を駆け上ってきたクララに、言葉の後半を奪われた。
息を切らしながら扉の前に立つソージを押し退け、部屋に足を踏み入れるクララ。
見回しても。
懸命に見回しても。
捜し求める人は見当たらない。
「『彼』ってフランシスなの?
眠ったってナニ?
願ったってナニを?
ねぇ…
フランシスはどこ…?」
「彼が願ったのは、死。
そして、アナタの自由。
だから私が彼を殺した。」
親を見失った子供のように不安そうな顔をするクララに痛ましげな眼差しを向けながら、けれども非情に、ダリアは言い放った。