花の名は、ダリア
「ダメ。」
肩にそっと乗せられた華奢な白い手。
ソージの言葉に反応したのは抹殺宣告を下されたクララではなく、背後に立つダリアだった。
振り返りはしないものの、ソージの視線が一瞬逸れる。
その隙を逃さず素早く立ち上がったクララは、ソージに背を向けて逃げ出した。
階段を駆け下りる音。
そして、玄関ドアの開閉音。
「…
どうして避けなかったンです?」
ソージはクララの動向を放置して、物置部屋の入り口を見つめたままダリアに問い掛けた。
「私を殺して前を向けるなら、そうしたほうがイイと思ったからよ。」
「…
貴方が生きているとわかれば、あの女は何度でも殺しに来ますよ?」
「飽きるまで殺せば、きっといつかはスッキリするわ。」
「…
その度に傷つくクセに。」
「平気よ。
私、死なないもの。」
「…
そうじゃない。
貴方の心が、傷つくでしょう?」
拳を固く握ってそう言ってから、ソージはやっと振り向いた。