花の名は、ダリア
開いたままの窓から差し込む月明かりに照らされたダリアと、視線が絡む。
あぁ…
綺麗だ。
血に塗れた塵だらけの部屋を背景に立っていても、彼女は本当に綺麗だ。
だけど…
やはりソージが恐れていた通り、ダリアからはいつものあどけなさが消えていた。
美しさは少しも色褪せない。
けれど、長い年月を重ねて全てを諦めてしまった、老女のように見えた。
美しいまま年老いたダリアが言う。
「平気よ。
私、傷ついたりしないもの。」
(そんな顔して、ナニをほざく。)
ソージは目一杯眉を顰めて、月下の麗人から目を背けた。
ほんとにね。
そんなに悲しい顔しちゃってね。
ナニをほざいてやがンのかね、この人は。
バカなの?
死ぬの?
ダリアは無防備すぎる。
他人の痛みは敏感に察するクセに、自分の痛みは気にもとめない。
いや、自分が傷ついついることにさえ、気づいていない。
だから守ってやらなきゃいけないのに。
守ってやりたいのに…
また、こんな悲しい顔をさせてしまった。