花の名は、ダリア
「チっ」
自分の不甲斐なさに舌打ちしたソージは、刀を握り直して身を翻した。
「俺が女を追いますから、ダリアは先に帰ってて下さい!」
「ダメ。」
ハイ、また止められた。
ソージが手にする刀の鞘を、ダリアがギュっと握りしめている。
全く… 今度はナンナノ?
「ねぇ、クララちゃんを殺さないでね?」
ハイ、また他人のコトばっか。
ほんとにもー…
この人は…
この人はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
無言で刀をステッキ状に戻したソージは、クルリと半回転してソレをダリアに手渡した。
そして彼女を見下ろし、優しく微笑む。
こめかみに青筋を立てながら、優しく、優し──く、微笑む。
「ハイ、これで安心でしょう?
大人しく帰ってくださいネ。
それから、さっきみたいな顔はやめたほうがイイですよ。
見苦しいから☆」
コレはヒドい。
言い逃げ状態でクララの家を飛び出したソージは知らない。
『見苦しい? 見苦しいの???』
なんて呟きながら、ダリアが青ざめた頬を両手でペタペタ触っていたコトを。