花の名は、ダリア
いやいや。
ちゃーんと見えてますって。
ヴァンパイアの視力、ナメんな。
(そんなドヤ顔されましても…)
クララを視界に捉えたまま、ソージはその少女のような面差しには不釣り合いな表情で冷笑した。
教会なんて余裕。
『クララを殺す』という結末は変わらない。
問題は、『どう』殺すかってコトだけだった。
だってね?
近づいて殺ったら、彼女の血の匂いが身体についちゃうから。
そしたらね?
彼女を殺ったことがダリアにバレちゃうから。
汚いコトは、全て俺が引き受ける。
ダリアは何も知らなくていい。
ソージはコートのポケットから、握れば見えなくなるサイズの小さなモノを取り出した。
この距離なら、移り香を気にする必要はない。
この距離なら、狙いを外すこともない。
手の中で弄んで感触を確かめてから、ソージはソレを無造作に放った。
力一杯投げた様子もないのに、弾丸の如く空を切るソレ。
いや、『如く』なんかじゃない。
ソレは、クララがダリアに向けて発砲し、ソージが掴み取ったウェブリー・リボルバーの弾丸だった。
本当なら、ダリアに放った全弾を返してやりたいトコだケド…
結果は同じなンだから、多くは望むまい。