花の名は、ダリア
銃弾は真っ直ぐに飛んだ。
そして、クララの眉間を真っ直ぐに貫いた。
笑った顔のまま仰け反り、糸が切れたマリオネットのようにパタンと倒れる身体。
きっと彼女は、自らの死を自覚することなくフランシスの元へ旅立っただろう。
アッシジの聖フランシスコの説教に感銘を受け、裕福な暮らしを捨てて生涯を神に捧げたという聖乙女クララ。
ほんの少し道が違えば、同じ名を授かった彼女も、喜びと祈りを口ずさみながら生きたのだろうか。
気高く清らかな、優しい女でいられたのだろうか。
…
ムリか。
愛ゆえに狂い。
愛ゆえに多くの人を殺め。
愛ゆえに身を滅ぼした。
彼女はソージと同様、立派な愛のクソなのだ。
聖人でいられるはずがない。
同類に手を下したソージは、いったい何を思うのだろう。
彼女の末路に、自らの末路を重ねるのだろうか…
(…知ったこっちゃねェわ。)
月明かりを浴びて横たわる『イーストエンドの切り裂き魔』に、ソージはなんの感慨もなく背を向けた。
すべきことは全て終わった。
早く帰ろう。
ダリアの元へ。
なーんも思わねェよ?
だからこそ、愛のクソ。