花の名は、ダリア
「この街に来た夜、初めて会った時ですよ。」
「…
私もよ。
あれだけ香っていれば、家畜の血の匂いと人の血の匂いを嗅ぎ違えるワケないものね。」
「じゃあ、どうしてすぐに言わなかったンです?」
「…
ソージだって、言わなかったじゃない。」
「俺はただ、貴方の悲しい顔を見たくなかっただけですよ。
貴方は?」
「悲しい顔?」
自分のことながら『悲しい顔』に心当たりのないダリアは、目を瞬かせて首を傾げるが、ソレは今はどーでもいい。
ソージは追及の手を緩めない。
「えぇ。
で?貴方は?」
「…
私は…
ソージがクララちゃんのコトを気に入ったンだと思ったから…」
「ハイ?」
…
ハイ?
いやいや…
ハイ?
ダリアが言いにくそうにおずおずと口にした言葉に、今度はソージが目を瞬かせた。