花の名は、ダリア
「あの血の匂いに、ソージが気づかないはずないじゃない?
なのに、それでも彼女と同じトコロで働くなんて言うから…」
いやいや…
気づいて、探りを入れようと思って、近づいただけだから。
「だから私、一人でやらなきゃと思ったの。
彼女と関係の深い『穢れし者』をソージが殺しちゃったら、二人の仲にヒビが入るかも知れないでしょう?」
いやいやいや…
二人の仲、うっすいから。
ヒビ入る前に、割れるから。
「ねぇ、ソージ。
ヴァンパイアだって恋をしてもイイじゃない?
そりゃ生きる時間が違うから、いずれ必ず別れが来るわ。
でもそれは、人同士だって同じでしょう?
今回は残念だったケド…
私、またソージが生物としての壁すらも越えられる恋をしたら、もっともっと応援するわ!」
いやいやいやいやぁぁぁぁぁ!?
最初は言いにくそうにしてたクセに、最終的に高らかに恋のキューピッド宣言しやがったぁぁぁぁぁ!?
違うから!
根本からして間違ってるから!
「残念なのは、貴方の頭です。」
『私、イイコト言った』なんて様子で満足そうに一人コクコク頷くダリアの頬を両手で挟んで引き寄せ、ソージは黒い笑みを浮かべてそう言った。