花の名は、ダリア
可愛いはずのソージの顔が、瞬く間に険しく歪む。
報われないって、なんだよ。
惚れた男でもいンのかよ。
忘れられない男がいるとでもいうのかよ。
(よし。
ソイツ、斬ろう。)
ソージの中の黒いケモノがゆっくりと頭をもたげた時…
「私も、ソージが好きよ?」
指で髪を右耳にかけながら、再びダリアが口を開いた。
「でも… それってちょっと違うと思うの。
私、長く生きてる間に必要な感情をいくつか落っことしてきちゃったみたいで、男女間の『好き』とか、よくわかんないのよね…」
「なんだ…
そんなコトですか。」
考え考え紡がれた彼女の言葉を聞く内に、ソージの頬はアッサリ緩んでいく。
脳内ケモノもアッサリ眠りにつく。
立ち上がったソージはダリアの隣にストンと腰を下ろし、握ったままの手を指を絡めて繋ぎ直した。
それから、柔らかく微笑む。
今度こそ、本当に微笑む。
「別に構いませんよ。
貴方の愛情が伴わなくても、『貴方』という存在が俺のモノならそれでいいンです。
貴方の気持ちが俺の上になくとも、俺は貴方を愛していますし、手放す気は一切ありません。」