花の名は、ダリア
根拠は、コレ。
女はほとんど家から出ない。
男はベーカリーで働いているが、ナゼか昼ではなく夜の仕込み。
どーだ?
ちょっとアヤシくなってきただろう?
なんでお日さま浴びて生きねぇンだって、思うだろう?
後は、コレ。
彼らを目撃した数少ない町人の証言によると、二人はかなりの美形らしいのだ。
男は乙女と見紛うばかりの可憐な容姿。
女に至っては
『この世のモノとは思えない…』
などと、話を聞いた全員が惚けた顔で口を揃えた。
どーだ?
もうかなりアヤシィだろう?
一度会って、確認しなければ。
『この世のモノとは思えない』ほどの美女を見てみたいとか、そんな不純な動機ではないぞ?
断じてないぞ?
これは、我輩の崇高な使命なのであーる。
そんなワケで我輩は、対ヴァンパイア装備を携えた上に変装までして、件の一軒家の扉を油断なくノックした。
時は昼下がり。
ヴァンパイアならば、棺の中で眠っている時間だ。
返事がなければ、疑惑は確定的。
勝手に家に押し入り、胸に白木の杭を打ち込んでやろう。
どーだ?どーだ?
返事は…
「ハーイ。」
…あったよ。