花の名は、ダリア
Ⅰ
静かだ。
あまりに静かだ。
ココにいると、喧騒も賑わいも…
親しい人の動向も、なかなか耳に入らない。
まるで世界から隔絶されているようだ。
『まるで』なんて言ってはみたが、事実、そうなのかも知れない。
こんな、病んだ挙げ句に病原菌を撒き散らす身体では、行く場所はもちろん、帰る場所さえもないのだから。
この肉体はもうすぐ朽ちる。
おそらく六月までもたないだろう。
食欲なんて皆無に等しいし、微熱続きで倦怠感が半端ナイ。
少し前まで盛大に出ていた咳も、今では体力が衰退しすぎて力なくコホコホ言いやがる始末。
なのに喀血だけは、現在進行形で盛大だ。
もう、ね。
コレ、ナンテ呪い?みたいな。
まぁぶっちゃけ
『コレ、労咳じゃないデスヨー
アナタ、呪われてマスヨー』
とかなんとか、胡散臭い心霊研究家に言われたとしても、
『デスヨネー』
なんて納得してしまうであろう人生を送ってきた。
だって俺、人斬りだもん。
公になっているのから、なっていないのまで。
敵の倒幕派から、道を違えた身内まで。
そりゃもう大概な人数をバっサバっサ斬ってきたもん。
100万回呪われても、致し方ねェわな。