花の名は、ダリア
まだ聞こえる。
ずっと聞こえる。
ザバザバ聞こえる。
ナニヤッテンノ?
手ェ洗いすぎだろ。
千手観音かよ。
モソモソと布団から這い出て深呼吸したソージは、意を決して障子枠に手を掛けた。
木の軋む音と共に障子が開く。
美しい人影が振り返る。
「あ、こんばんはー」
「…」
「…
こんばん…は?」
挨拶の言葉尻が訝しげに上がるが、構っている場合じゃない。
ソージは目を皿のように見開き、井戸の前に佇む女を凝視していた。
今回は、目が離せないンじゃない。
目を逸らすな。
瞬きもするな。
呼吸すら止めて、全神経を集中して、この光景を胸に刻め。
男として生まれたならば!!!
…
ナニ急に、男語ってンだって?
そりゃ、こーなるわ。
普段は隠している雄の部分が、全力で顔出すわ。
だって彼女、裸なンだもん。
素っ裸で、濡れた髪をクルクル捩って絞ってンだも─────ん!!??