花の名は、ダリア

口は開けずに唇の両端を上げ、目をキュっと閉じるその笑い方、萌え禿げる。

ダレかー、カツラ持ってきてー

もう、ね。
コレ、ね。
絶対ヴァンパイアじゃねーよ。

間違いなく妖精。
間違いなく運命の女。

我輩は対ヴァンパイア装備として持っていたニンニクを『お土産デス☆』なんて女に手渡し、誘われるがまま家に上がり込んだ。

そして木のテーブルに着き、拙くも愛らしい手付きで女が淹れたお茶を飲み、束の間の幸福を味わう。

そこで我輩は、自らの使命を思い出すことになるのである。

女は言った。


「ソージの作るクロワッサンは、絶品なの。
お仕事が大変だから、昼間はいつも寝てるケド。」


こうも言った。


「ソージが一人で出歩いちゃダメって言うから、私、あんまり外に行けないの。」


『ソージ』というのは、ココに住むもう一人の人物のことだろう。

なるほど。

女は妖精だが、男はヴァンパイアかも知れない。

自分が動けない昼間に美しい獲物が逃げ出さないよう、脅して行動を制限しているのだ。

この女を独占しているとは、なんて羨ましい…

いやいや。
なんて凶悪なヴァンパイアだ!

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