花の名は、ダリア
低くはないのにしっとりと落ち着いた声がして、振り向いた我輩の目に飛び込んできたのは…
イケメンだ。
艶のある長い黒髪。
細い鼻先。
黒く大きめの瞳。
寝起きのクセして涼しげで、角ばったところのない女性的な細面。
袖から覗く腕には筋肉が見てとれるが、全体的に細い、引き締まった肢体。
可愛い系イケメンだ。
死ね。
イケメンで妖精のカノジョ持ちとか、リア充死ね。
…
いやいや、血迷うな。
ここまでのイケメンなら、ヴァンパイアである疑いは濃厚だ。
確かめねばならないが、対ヴァンパイア装備は全部女にプレゼントしちゃいマシタYO!
どーする?どーする?
焦る我輩を尻目に、女は軽い足取りで男に駆け寄る。
「おはよう、ソージ。
神父さまが遊びに来てくれたのよ。」
それを聞いた男が、我輩に会釈してから女に向き直る。
「そうですか。
で、そのバラは?」
男の指が女の髪に伸びた。
コレは願ってもない展開。
男がバラに触れれば。
そしてバラが枯れれば。
その憎たらしい顔面に、白木の杭を打ち込んでやろう。