花の名は、ダリア
と、少年は思った。
それでも、二人の軍人を反抗的に睨み上げた彼の耳に…
「アレがイイわ。
汚さないでね?
それと、殺さないでね?」
場にそぐわない、可愛らしい声が届いた。
声の出所は、たぶん上。
軍人二人組もすぐさまルガーP08を構え、警戒も露に木の枝に遮られがちな夜空を仰いでいる。
ナニを汚さないでって?
ダレを殺さないでって?
この声は、瑞兆なのか、凶兆なのか。
逃亡者と追跡者、どちらにとってそうなのか…
「ハイハイ。
お任せください。」
緊張と困惑に固まる三人の上に、今度は男の声が降ってきた。
真夜中、森に潜む男。
レジスタンスの可能性大。
そう判断した軍人たちは、狙いを定めるべき人影も見つけられないまま、とりあえずトリガーを引き絞ろうと…
ガサ…
その時、木の枝を揺らして、誰かが彼らの背後に舞い降りた。
驚く暇もなく、二人は声も上げずに膝から崩れていく。
ナニコレ?
殴った?
それとも、絞めた?
ナニも見えなかったよ?
地に這いつくばった情けない格好のまま、少年は茫然と口を開けた。