花の名は、ダリア
「終わりましたよ。」
地面に倒れる直前の軍人二人の身体を、襟首を掴んで平然と支えた男が、上に向かって声をかけた。
キレイな顔立ちの男だ。
スラリとした身体つきやポニーテールにした艶やかな黒髪と相まって、黙っていれば長身の女性に見える。
一般的な農夫の格好が不釣り合いで、なんだか笑いが込み上げてくる。
けれど次に木の上から降ってきて華麗に着地を決めた女のことは、笑えなかった。
さらに農夫の格好が似合ってなかったが、全く笑えなかった。
なぜなら、美しすぎたから。
「早ーい!さすがね!」
嬉しそうに両手を合わせた女が、男を見上げて微笑む。
透き通った白い頬に浮かぶ、愛らしいエクボ。
その肌よりももっと透き通った、大きなぺールブルーの瞳。
月の光を集めて創ったような、長いぺールブロンド。
そしてその全体を覆う、暗闇に溶けてしまいそうな儚さ。
ダリアだ。
もちろん男はソージだ。
二人が出逢ってから、長い時が流れた。
けれどまだ、一緒にいるよ。
気を失った男の一人をソージから受け取ったダリアが、テキパキと軍服を剥ぎ取り、テキパキと自分も服を脱いでいく。
また強奪か。
またスッポンポンか。
そーゆー雑さ、変わってねーな。