花の名は、ダリア
「ドクロの紋章か…
SSですね。」
残った男の制帽を奪って確認したソージが、ソレを被りながらダリアに声をかけた。
コッチの強奪作業も着々と進んでいる。
だが、ダリアの作業はもっと進んでいる。
「一度着てみたかったのよね、コレ。
これで潜入も簡単ね。」
履いていたズボンを早々に土の上に落としたダリアが、黒いコートをフワリと広げながら言った。
ソージの言うSSとは、ナチス親衛隊のコト。
そしてココは、ポーランド南部にあるオシフィエンチム。
第二次世界対戦真っ只中の現在、この町はナチスドイツの占領下にあるため、それなりの権限を有する親衛隊になりすませば、ダリアの言葉通りドコへでも潜入できそうだが…
「ダリアはともかく、俺に潜入は無理だと思いますよ。」
軍人が持っていたサーベルを検分しながら、ソージは肩を竦めた。
「どうして?
コレ着て『入るー入るー』って言えば、ドコにでも入れるンでしょう?」
「…
あぁ、『ハイル』ですか。
用途用法、なにもかも間違ってますよ。」
うん。
ボケっぷりも変わンないね。