花の名は、ダリア
そんな花をね?
一人占めしたいワケ。
誰かと共有する気はないワケ。
「て、コトで。
さっさとドッカ行け、クソガキ。」
ソージが、微笑みを交わすダリアと少年の間にすかさず割って入る。
すると少年の表情が瞬く間に険しくなり…
それから、睫毛を伏せて俯いた。
「…
いや、行かない。
俺にはやらなきゃならないコトがあるから。」
「はぁ?
ダリアの話、聞いたろ?
ココは危な」
「わかってる!
でも!
デボラを助けなきゃならないンだ!」
鋭く叫んだ少年は、目を怒らして顔を上げた。
けれど、ソージを睨んでいるわけじゃない。
彼が思い詰めた眼差しを向けるのは、暗い森の向こう。
その方向にあるモノは…
「まさか…アウシュビッツ?」
ソージは闇に紛れるほどの低い声で少年に訊ねた。
彼の答えがYESなら。
彼が助けたいという人物の生存は、ワルシャワに行った仲間たちよりも絶望的だ。
アウシュビッツ強制収容所は、この世の地獄なのだから。