花の名は、ダリア
「生きてるよ。」
重い沈黙の中にあるソージの思いを読み取った少年が、首を左右に振りながら力強く言った。
根拠のない自信だろうか。
それとも…
「俺とデボラは男女の一卵性双生児なンだ。
貴重なモルモットだって、あのイカレた医者に言われたよ。
二人揃ってなきゃ」
「おいおい?
ちょっと待て?医者?」
チラリとダリアに視線を送ったソージが、慌てたように少年に訊ねた。
イヤな予感がする…
「そーだよ、トーデスエンゲルって呼ばれてた。
てか最後まで聞けよ。
二人揃ってなきゃ実験はできないだろ?
だから俺が逃げ回ってる限り、デボラは生き」
「あら、偶然ね。
私たちも、そのお医者さんに会いに行くのよ。」
「そーかよ。
いいから最後まで聞け…
‥‥‥え?」
「目的地が同じなら、一緒に行けばいいじゃない。
ね? そうでしょ?ソージ?」
頬にエクボを作って笑うダリアを見て、少年は目を瞬かせた。
ソージは…
肩を落として夜空を仰いだ。
ヤな予感ほど、よく当たるってね。