花の名は、ダリア
子守唄のようにも聞こえる、ソージの穏やかな優しい声。
なのに、ダリアの肩はビクリと震えた。
どうやら目が冴えたらしい。
「おかしな話ですよねェ?
手術なんてしなくても、『貴族』が血ィ吸って与えりゃ『穢れし者』は出来上がりますもんね?」
「…わかんないわ。」
「わからないコトは他にもありますよ?
『忠実で』って点です。
確かに『穢れし者』はなかなか死にませんが、絶対言うコト聞かないでショ、アレ。」
「…わかんないったら。」
「ニュアンス的には『穢れし者』よりも『仕えし者』に近い気がするンですよねェ?」
「…」
「…で?
トーデスエンゲルは『貴族』」
「もう眠いわ。」
甘えた口調で。
けれど有無を言わさぬ拒絶を漂わせて。
ダリアはソージの追及を遮った。
それからクルリと身体の向きを変え、ソージの胸に頭をもたせかける。
ズルい人だ。
縋るようにシャツを握りしめる小さな手が愛しすぎて、それ以上ナニも聞けなくなる。