花の名は、ダリア
ずっと気になっていた。
『穢れし者』がいるということは、『貴族』がいるということだ。
今尚『穢れし者』が生まれ続けているということは、今尚生き続けている『貴族』がいるということだ。
(俺以外に…)
ソージは鋭い眼差しを焚き火に向けた。
黒い瞳に炎が映り込み、まるで彼自身がソレを灯したように見える。
『貴族』を生めるのは、純血のヴァンパイアだけ。
つまり、ダリアが誰かに禁断の蜜を与えたのだ。
いつ?
どこで?
どうして?
永遠の生なんて呪いだと言って、人に与えることをあんなに嫌がってたクセに。
ソイツ誰だよ。
どんな関係なンだよ。
なんで教えてくんねーンだよ、クソが!
あぁ、もう…
嫉妬で狂い死ねる。
(貴方は俺だけの花だ。
…そうだろ?)
長い睫毛を伏せ、安心しきって身を委ねているダリアを、ソージは優しく抱きしめた。
俺だけの花じゃないと言うのなら、俺だけの花にするまでだ。
愛しい人の体温を全身で感じながら、ソージもそっと目を閉じる。
瞳に宿った昏い炎は、瞼で隠された。