花の名は、ダリア
「ぐ… おまえこそ、ナメんなよ…
俺は…モルモットなんだよ…
とっとこ走って滑車回したり…ぐ…しねぇゾ…」
あー… うん。
うん?
論点、ズレてナイ?
腹を押さえて蹲ったヨシュアを、ソージは呆れ顔で見下ろす。
「状況は刻一刻と変わる。
いつまでも捕獲対象でいられると思うなよ?
命を奪い合う緊張感を、脳と身体に叩き込め。
そのために、おまえにゃ真剣を持たせてンだから。」
「…」
唇を噛んで呻きを堪えたヨシュアは、情けなく眉尻を下げてサーベルの切っ先を見た。
けれど、すぐに目を逸らしてしまう。
抜き身の刃の輝きは、今の彼には色んな意味で重すぎた。
ソージの言うことは、いちいちご尤もだと思う。
殺らなきゃ殺られる。
まさにソレだとわかってる。
だが、怖いのだ。
自分が死ぬことはもちろんだが、誰かを殺してしまうことも。
たいした意味もなく多くの命が奪われていくのを、ヨシュアは見てきた。
悪魔の所業だと思った。
今、自分がしようとしていることも、同じなのではないだろうか。
意味なく誰かの命を奪い、意味なくこの手を血に染めて…