花の名は、ダリア

美しい人は悠然と近づく。

縁側で蹲るソージに近づく。

近づいて、肩に手を掛けて、血で汚れた顎を細い指で掬い上げて…

唇の端に、あたたかく湿ったナニカを感じた瞬間、ソージの思考は完全にストップした。

吐息がかかる距離にいる麗人。

病的にすら見える、冴え冴えと白い肌。

クリクリと大きいクセに目尻は切れ長な、猫のような双眸。

その中に収まるペールブルーの瞳は、まるで大粒の宝玉。

スっと通った鼻筋と、小さな小鼻。

こんなに近くで見つめているのに、些細な粗も探し出せない。

でもって、このエロい身体だもんな。

本当に完璧だ。
男の夢を叶えるために舞い降りた、女神だとしか思えない。

それに、エロいと言えばコレもだ。

肌と同色の薄く形のいい唇を割って顔を覗かせる舌。

不自然なほど赤く、ぬらぬらと濡れ光って…

濡れ光って‥‥‥







ナンデそんなに赤いの?
ナンデそんなに濡れてンの?


(血…)


ジワジワと思考能力を取り戻しつつ、ソージは柔らかな感触が残る自らの口元を指で触れた。

< 24 / 501 >

この作品をシェア

pagetop