花の名は、ダリア
美しい人は悠然と近づく。
縁側で蹲るソージに近づく。
近づいて、肩に手を掛けて、血で汚れた顎を細い指で掬い上げて…
唇の端に、あたたかく湿ったナニカを感じた瞬間、ソージの思考は完全にストップした。
吐息がかかる距離にいる麗人。
病的にすら見える、冴え冴えと白い肌。
クリクリと大きいクセに目尻は切れ長な、猫のような双眸。
その中に収まるペールブルーの瞳は、まるで大粒の宝玉。
スっと通った鼻筋と、小さな小鼻。
こんなに近くで見つめているのに、些細な粗も探し出せない。
でもって、このエロい身体だもんな。
本当に完璧だ。
男の夢を叶えるために舞い降りた、女神だとしか思えない。
それに、エロいと言えばコレもだ。
肌と同色の薄く形のいい唇を割って顔を覗かせる舌。
不自然なほど赤く、ぬらぬらと濡れ光って…
濡れ光って‥‥‥
…
…
…
ナンデそんなに赤いの?
ナンデそんなに濡れてンの?
(血…)
ジワジワと思考能力を取り戻しつつ、ソージは柔らかな感触が残る自らの口元を指で触れた。