花の名は、ダリア
Ⅳ
「ねェ、ダリアさん。
あのクソヤロー、なんで煙なんて噴いてたンですか?」
しゃがみこんで、集めた小石を慎重に積み上げながら、ヨシュアはダリアに訊ねた。
遊んでンの?って?
ちーがーいーまーすー。
ソージが洞窟で眠っている夕方のこの時間に、森に仕込んだ罠に今晩の夕飯がかかっていないか見て回るのが、ダリアとヨシュアの仕事なのだ。
そのついでに、冬眠中のヘビを見つけてキャっキャ言ってみたり、今にも切れそうなロープを拾ってロシアンターザンしてみたり…
いやいや。
遊んでるワケじゃねーから。
コレほんと。
「陽射しを浴びて焦げたのよ。
『貴族』はお肌がデリケートだから。」
これまた慎重に小石を積み上げながら、ダリアは答えた。
どうやら今日は捕獲した野ウサギを傍らに放置したまま、バランスロックに挑戦中のようだ。
もう一度言っておこう。
遊んでるワケでは、ナイ!
「え?
貴族って…
アイツまさか、エラい人?
クソヤローなのに?」
「んーん。
そーゆー貴族じゃないわ。
ソージはヴァンパイアなの。」
「‥‥……は?」