花の名は、ダリア

「いたよ。
優しい人たちも、たくさん、いた。」


一言一言噛みしめるように、ヨシュアは呟いた。

すると、ますます強く抱きしめられる。
頭をヨシヨシと撫でられる。

ついでに耳元で、うふふ、と愛らしい笑みを漏らされて…


「そうよね。
人間は限りある命の尊さを知り、だからこそ自分以外の限りある命を思いやれる、美しい生き物よね…」




あら?
なんでだろ?

確かにダリアは笑っている。

なのにどうして、その言葉はこんなに悲しく響くンだろう。

お互いの肩越しに広がる世界は繋がっているはずなのに、彼女の宝石のような瞳には、どんな風に映っているのだろうか。

久し振りに味わうぬくもりに包まれて、ヨシュアがぼんやりと考えていると…


「いたぞ!」


粗野な怒声が森に木霊した。

キツい現実ってヤツは、いつだって突然襲いかかってきやがりマスYO!

舌打ちしたヨシュアがダリアを背に庇って立ち上がった時にはもう、最初の声に導かれた兵士が複数、彼らを取り囲んでいた。

前も兵士。
後ろも兵士。

これぞまさに八方塞がり。

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