花の名は、ダリア

ヨシュアとダリアに銃を向けて、兵士たちが口々に叫ぶ。


「間違いない。
大尉ご所望の、例の双子だ!」


「抵抗するな!」


「大人しくしていれば、ココで殺す気はない!」


ココで殺す気はない、ね。
ココで、ね。

ココじゃなければ殺す気満々って、ね。

そんなんで大人しくするバカはいねぇっての!


(なんとかこの囲いを突破して、逃げ道を…)


覚悟を決めたヨシュアの指が、腰に提げたサーベルの柄に伸びた時…


「あ、そうだわ。」


緊張感のない可愛い声と、ポンっと手を打つ音が、背後から聞こえた。

もぉ…
気が抜けるようなコト、しないでくンない?

鼻に皺を寄せたヨシュアがチラリと振り返ると、立ち上がったダリアは砂のついたお尻を手で払っていた。

それから、ビっと姿勢を正して。
掌を下にした右手を一度胸の前で水平に構えてから、腕ごと右斜め上に突き出して…


「入るー!!」


なーんて言っちゃいマシタYO!

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