花の名は、ダリア

それに、懸念材料はまだある。

ヨシュアがさりげなく視線を送った先には、敬礼したまま待機する兵士たち。

ハイ、どー見ても不審そう。

そりゃそーだ。
上官がゴミと仲良く内緒話しているなんて、彼らにとってはあり得ない光景だろう。

てか、ソレ以前に『入るー』だしネー。

おそらく既に、疑われている。

ダリアがナチスではないことを。

そんな彼女が、ヨシュアとデボラの逃亡に、手を貸す素振りを見せようものなら…


「やめましょう。
このままじゃ、ダリアさんが真っ先に殺されます。」


ヨシュアは青ざめながらも、強い眼差しでダリアを見上げた。

すると、彼女の目が大きく見開かれる。
それから、白く滑らかな頬に、愛らしいエクボが浮かび上がる。


「心配してくれて、ありがと。
でも平気よ。
私、死なないもの。」


「は…」


「ねェ、ヨシュアは私がコワくないンでしょう?」


「は…い…」


「なら、逃げるのなんて簡単だわ。
私がこれからどんな風になっても、ヨシュアは冷静に、するべきコトが出来るでしょう?」


…どんな風になる気だ、コノヤロー。

でも、怖くないのはホントだよ。

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