花の名は、ダリア
ソージのアレな発言に、女は微妙な面持ちで頭を掻いた。
それから、ヒョイとソージから身を離して。
チョコンと縁側に腰を下ろして。
しなやかな指で右耳に濡れた髪をかけながら…
「私の言う通りなら、私は死なないし。
アナタの言う通りなら、私はもう同じ病気だし。
これで、どっちにしても、背中をさすっても平気でしょう?」
笑った。
頬に、なんとも愛らしいエクボを作って。
なんて可憐なンだろう。
なんて無垢なンだろう。
そして…
なんて儚く透き通っているンだろう。
ついさっきその身体に煽られた劣情さえ、掻き消されてしまうほどの純潔。
ズルいよ。
そんな顔されたら、腹を見せて服従するしかない。
「…ハイ。」
人生初の完敗にも関わらず、ソージはどこか嬉しそうに頷いた。
彼女は背中を撫でてくれた。
血に汚れた身体を、水で絞った手布で拭ってくれた。
浴衣を着替えさせてくれて、床板を掃除してくれて…
なみなみと水が入った手桶を渡され、
『どうぞ、飲んで』
と言われた時は、やっぱ雑だなと思った。