花の名は、ダリア


ARBEIT MACHT FREI

『働けば自由になる』

映画などでもよく見る、アウシュビッツ強制収容所の門に書かれたスローガンだ。

『B』の文字が逆さに見えるのは、コレを作らされた囚人たちのささやかな抵抗だった、なんて話もあるが…

そりゃ抵抗したくもなるわな。

悪ふざけにも程だもんな、この一文。

笑えねぇ。

その、自由なんてちゃんちゃら可笑しい地獄への入り口を通過すると、赤レンガの建物が整然と建ち並ぶ。

まるで一つの街だ。

ヨシュアは恐怖と不安に押し潰されそうになりながら、この場所に戻ってきた。

そう、自ら戻ってきたのだ。

何も知らずにデボラと二人で連れてこられた、前回の時とは違う。

まぁ、兵に連行されてるってのは、変わんないンだケドネ。

隣にピッタリくっついて歩くのは、物珍しそうに辺りを見回しているダリア。

アンタさー…

もはやSSのフリする気なんてねぇだろ。

並ぶ二人を油断なく取り囲んでいるのは、ナゼか銃を構えた複数の兵士たち。

コレさー…

もはやバっレバレだろ。

拘束されていないのが奇跡だよ。

女子供だから、ナメられてンのカナ。

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