花の名は、ダリア
前置きも説明も、ナニもナシ。
彼らはすぐさま、綺麗に清掃された手術室に連行された。
そんなに待ちきれマセンカ。
ソーデスカ。
トーデスエンゲルの逸る気持ちを物語るかのように、一人目の実験体は、既に待機させられていた。
「デボラ!」
声を上げたヨシュアが己の半身に駆け寄ろうとして、兵士に羽交い締めにされる。
デボラもまた、兵士に背後から取り押さえられながら…
「ヨシュアのバカ!
なんで遠くに逃げなかったの!?
なんで戻ってきちゃったの!?
この… 大バカ野郎!!」
怒鳴った。
…
あれ?
涙の再会じゃねーの?
気ィ強すぎ。
てか、元気すぎ。
(元気…)
眉を吊り上げるデボラを、ヨシュアは頭から爪先まで注意深く見回した。
彼女は元気だ。
ケガをしている様子はない。
栄養状態も悪くないようで、他の囚人たちみたいに痩せ衰えてはいない。
モスグリーンの手術衣を着せられていること以外は、ヨシュアのよく知るデボラだった。