花の名は、ダリア

おそらく他の囚人たちとはかけ離れた、厚待遇を受けていたに違いない。

健康な身体で実験に臨めるように。

殺されるために不自由なく生かされていたのだから喜ぶべきことではないが、それでもヨシュアは安堵の溜め息を吐き出した。

会いたくて会いたくて堪らなかった半身に、ヨシュアは優しく微笑みかける。

けれどデボラは彼を睨みつけたまま、口元を綻ばせようともしなかった。

彼女はいつだって強気。
双子と言えども、いつだってお姉ちゃん。

両親がいなくなった今、弟を守れるのは自分だけだと頑張ってきた。

でもね?

本当は怖かったでしょう?
本当は泣きたかったでしょう?

今だって、そうなんでしょう?

手に取るようにわかるンだ。

だって元々俺たちは、一つの命だったンだから。

あぁ、傍に行きたい。

傍に行き、寄り添って、
『どんな結果になろうとも、もう二度と離れはしない』
と、彼女に告げたいのに…

ヨシュアはデボラを見つめたまま、もどかしい気持ちで身を捩った。

すると隣から、不満を露にした可愛らしい声。


「ねェねェ、どうして空気を読んであげないの?」


この状況でそんなノーテンキなコト言っちゃえるのは、一人しかいないヨネー?

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