花の名は、ダリア

ヨシュアが視線を移すと、ダリアは頬をプゥっと膨らませて、彼を拘束している兵士の肩をつついていた。


「放してあげなよ。
家族が久しぶりに会ったのよ?
くっついてたいキモチがわかンないの?」


さらにデボラの後ろにいる兵士にも、人差し指をビっと突きつける。


「ほら、アナタも。
気が利かないンだから。
そんなんじゃ、女のコにモテないわよ?」




今、ココで説教か。
モテる男指南やっちゃうか。

叱られて、どうしてだか赤面した兵士たちが、複雑な表情で顔を見合わせる。

どうやら彼らは、ダリアの扱いに困っているようだった。

ナチスの一員でないのは、もはや疑いようがない。

ならば、彼女はいったいなんなのか。

他の囚人たちのように、怯えたりしない。
レジスタンスのように、反抗もしない。

あくまで無邪気で自然体。

それに何より、同じ人間とは思えないほど美しい…

兵士たちも、ダリアの存在にやっと気づいたデボラも、まるで夢の中にいるような気分で、この世に降臨した女神を見つめた。

って、女神サマ、現在お怒りデスケドネ!?

お口、とんがってマスケドネ───!?

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