花の名は、ダリア
内緒話のつもりなのかも知ンないケド…
筒抜けデスヨ?ダリアさん。
『可愛いモルモット』たちから視線を逸らしたトーデスエンゲルは、蔑んだ目でダリアを一瞥して…
ポカンと口を開けて二度見した。
実験体と一緒にいたという、SS黒服に身を包んだ女。
てっきり、このアウシュビッツに乗り込んで、顔見知りを奪還しようなどと無謀なことを画策する、レジスタンスだと思っていた。
それが、どうだ?
光の膜を幾重にも重ねたようなペールブロンド。
淡く澄んだペールブルーの瞳。
命なき美術品と見紛うほどの、透き通る白い肌と完璧な容姿。
明らかに優越人種ではないか。
それも、極上の。
「…
おまえは誰だ?
アーリア人だろう?
なぜ劣等種なんかと一緒にいた?」
熱が孕む眼差しをダリアに注いだまま、トーデスエンゲルは喉に絡んだ声で呟いた。
この場に多くの部下たちがいなければ。
人体実験という、趣味と実益を兼ねた使命がなければ。
ダリアとの間に、白いシーツが掛けられた手術台がなければ。
今すぐにでも彼女に襲いかからんばかりの欲情を、トーデスエンゲルはその表情に滲ませていた。
究極のレイシスト・ナチスの権化であるこの変態は、理想的な優越人種を愛しすぎている。