花の名は、ダリア
またなぞる。
また舐める。
そして呟く。
「まず、双子の一人を『穢れし者』に変えたのね。
そして血を全部抜いてから、心臓を破壊した。
それからその呪われた血を、同じ遺伝子を持つもう一人に交換輸血した。
人間としての意識を保った『穢れし者』…
つまり『仕えし者』にするために。」
ナニやってンだ。
てか、ナニ言ってンだ、この女。
どうして軍の重要秘密事項である、実験内容までわかるンだ?
その異様な行動と人間離れした美しさが相まって、彼女が全く別の生き物に見えてくる。
…
別の… 生き物‥‥‥?
「ねェ。
コレは、本当にアナタたちが考えたコト?
誰かに命じられたわけではなく、本当にアナタたちがやったコトなの?」
「そ… そうだ。」
人差し指を下唇に当てたままのダリアの問い掛けに、トーデスエンゲルは残った威厳を掻き集めて唸るように答えた。
彼だけが思い当たる可能性に、恐怖が冷たい汗となって背中に流れる。
「そう。
私、アナタたちが嫌いだわ。」
氷のように冷えきったペールブルーの宝玉が、トーデスエンゲルを射抜いた。