花の名は、ダリア
Ⅵ
ソージが目覚めると、誰もいなかった。
ヨシュアに襲いかかられて目を覚まし、返り討ちにして、ダリアが笑いながら止めに入るのが、最近のお約束だったのに。
今日は誰もいなかった。
ナニコレ?
アイツら、ドコ行った?
俺、ハブられた?
夕闇が迫る森を捜索すると、二人の痕跡はすぐに見つかった。
集められた大量の小石。
食材予定の野ウサギが入った網。
それから、軍靴と思われる複数の足跡…
ナニコレ?
こりゃ、本格的にハブられたみてェだな。
「チっ」
端正な顔を歪めて舌打ちしたソージは、SSコートの裾を翻して黒い風になった。
俺をボッチにするとか…
イイ度胸だな、クソが。
あっと言う間に悪名高き絶滅収容所に辿り着き。
跳び越えることもできるクセに、ナゼか高圧電流が流れる鉄条網のフェンスをブチ破り。
ダリアの血の匂いを頼りに直行すればイイのに、ナゼかアチコチ寄り道したりして…
第10ブロックの前に立ったソージは、普段の彼ではあり得ないほど息を切らしていた。
や、猛ダッシュしたンデスヨ、まじで。
ヴァンパイアと言えども、限界突破するとキツいモンはキツいね。