花の名は、ダリア
女のコみたいに可愛い顔、とか。
気のせいだったわ。
今の彼は、精悍で凛々しい男にしか見えない。
どんどん広がっていくオレンジ色の光に照らされたソージを見上げて、ヨシュアも頬を引き締めた。
「俺、デボラ連れて逃げるよ。」
「あぁ、それがイイな。
今なら混乱に乗じて簡単に逃げられンぞ。」
「ダリアさんのコト、頼んでイイ?」
「あぁ、任せとけ。
俺の力は…
いや、俺の全てはダリアのためにあるからな。」
ふ、と相好を崩したソージが、自らの腰に手を伸ばす。
そして、ソコに提げてあったモノをガチャリと外して…
「コレ、おまえにやるわ。」
ヨシュアに向かって、無造作に放り投げた。
はわわ、なんて言いながら、ヨシュアがなんとか受け止める。
両腕にズシリと負荷をかけるソレは、以前ソージが『俺の』と言った護拳のない刀だった。
恐る恐る鞘をスライドさせてみれば、現れたのは氷刃と呼ぶに相応しい一振り。
最近やっと慣れ親しんだサーベルとは全くの別物なのは、一目瞭然。
「…イイの?」
ゴクリと生唾を飲み込んだヨシュアは、震える声で訊ねた。