花の名は、ダリア

「あっくあ…
ナンデスッテ?」


「アックア・デッラ・レジーナ。
『王妃の水』って呼ばれてる香水よ。
あのペテン師が、いつも匂い消しに使っていたわ。」


彼女の視線を追えば、その先には引きちぎられた銀の鎖。


「やっと見つけたのに。
これじゃもう、血の匂いを追うこともできないわ…」


そうか。
一足遅かったンだ。

ソージは溜め息を吐き出してから指でダリアの顎を持ち上げ、彼女の顔を覗き込んだ。

まるで、彼女の意識を他から自分に取り戻そうとするように。


「知っているンでしょう?」


「わかんないわ。
きっとまた別の、潜みやすい場所に」


「や、ソイツの行き先じゃなくて、ソイツ自身を。

貴方が血を分けた『貴族』なンですよね?」


「…


うん…」


ダリアはペールブルーの瞳を潤ませながら、コクンと小さく頷いた。

クっソ可愛い。

でも、彼女にこんな表情をさせたのが自分じゃないことに、クっっっソ腹立つ!

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